「今の会社は合わない。でも、SESという働き方そのものが嫌なわけでもない」——そんな引っかかりを抱えたまま、転職サイトを開いては閉じている方もいるのではないでしょうか。
SESから別のSESへ移るという選択は、周りにあまり例がなく、相談しにくいかもしれません。キャリアの話になると、たいてい「自社開発へ行くべき」「社内SEが正解」という結論に寄っていきます。
ただ、SESで働くこと自体に納得しているなら、変えるべきは働き方ではなく会社のほうだった、という場合もあります。逆に、会社を変えても同じ不満が残るなら、その不満は会社ではなく働き方の側にあるのかもしれません。
この記事では、その線引きを一緒に見ていきましょう。
SESからSESへの転職は選択肢のひとつ
SESで働いていて何か不満があると、「では辞めて別の働き方へ」という話になりがちです。けれど、その前にもう一段階あります。
SESは特定の契約類型そのものを指す言葉ではなく、エンジニアの技術力を提供するサービスの呼称です。企業間では準委任契約などが用いられることが多く、実際の運用は会社ごとに違います。案件の決め方、評価のしかた、給与の考え方、営業の関わり方——このあたりは、同じ「SES企業」でも会社によってかなり差があります。
つまり、いま感じている不満の一部は、SESという働き方ではなく、今いる会社の運用によるものかもしれないわけです。
とはいえ、会社を変えれば何でも良くなるという話でもありません。移ってから「結局同じだった」となるのがいちばんつらいので、先に分けて考えておきましょう。
まず「SESが嫌」なのか「今の会社が嫌」なのか分ける
ここが、この記事でいちばんお伝えしたいところです。
同じ「もう限界かもしれない」という気持ちでも、その中身が会社への不満なのか、働き方への不満なのかで、次に選ぶ道が変わります。
| 今の不満 | 別のSESで変わる可能性 | 転職前に確かめたいこと |
|---|---|---|
| 希望と違う案件にばかり配属される | 変わることがある | 案件の決め方と、希望を伝える相手・タイミング |
| 単価に対して給与が低い気がする | 変わることがある | 給与の決め方と、評価の基準 |
| 何を頑張れば評価されるのか分からない | 変わることがある | 評価の項目と、誰がどう判断しているか |
| 営業に相談しても話が進まない | 変わることがある | 担当が誰になるのか、面談の頻度 |
| 客先で「外の人」として扱われる | 変わりにくい | ——(常駐という形自体に関わる部分) |
| 現場が変わるたび人間関係をやり直す | 変わりにくい | ——(同上) |
| 自社のサービスを育てる側に回りたい | 変わりにくい | ——(SESの立ち位置に関わる部分) |
上の3〜4行が中心なら、会社を変えることで状況が動く見込みがあります。下の3行が中心なら、SES会社をいくら比べても、たぶん同じところに戻ってきてしまうでしょう。
もちろん、きれいにどちらかへ分かれないことのほうが多いはずです。それでも「自分の不満は、どちらに重心があるか」だけ見ておくと、求人の見え方が変わってきます。
なお、辞めること自体をまだ決めかねている段階でしたら、SESを辞めたいと感じたときの判断軸のほうが先に読む記事になります。この記事は、SESを続ける前提で会社を見直す人向けです。
別のSES会社へ転職すると変わる可能性があること
ここからは、会社を変えることで動く可能性がある部分を見ていきます。どれも「会社による」ので、断定ではなく「変わることもある」という温度で読んでください。
案件の決まり方と、希望の通りやすさ
案件をどう割り振るかは、会社ごとにかなり違います。営業が決めてくる会社もあれば、複数の案件情報を本人に見せたうえで相談する会社もあります。
ここが合っていないと、何年いても希望の工程に近づけません。案件の選び方が変わるだけで、体感がまるで変わることもあるでしょう。
評価と給与の決まり方
現場での評価が自社に伝わりにくい、というのはSESでよく聞く話です。ただ、これも仕組みでかなり変わります。
現場のリーダーからの評価を拾う仕組みがある会社もあれば、年1回の面談だけの会社もある。単価と給与の関係をどこまで開示するかも、会社の方針しだいです。
「還元率が高い会社ほど良い」と単純化はできません。還元率が高くても、待機時の扱いや教育の仕組みが手薄なこともあります。数字ひとつで比べず、自分が何を重く見るかで判断しましょう。
営業担当との距離
意外と効いてくるのが、ここです。
案件変更を相談したいとき、誰に言えばよいのか。その人は現場の事情をどこまで分かっているのか。月1回でも面談があるのとないのとでは、困ったときの動きやすさが違います。
商流と、任される工程
同じSESでも、元請けに近い位置で入るのか、何社か挟んだ先で入るのかで、任される範囲が変わることがあります。ただ、上流の議論に触れる機会は、商流だけでなく、案件の契約や本人の役割にも左右されます。
商流が浅いほど良いと言い切れるものではありませんが、いまの現場で「決まったものを作るだけ」が続いているなら、次の会社ではどのあたりの案件が多いのかを聞いておきたいところです。
教育やキャリア支援の有無
資格支援や研修が用意されている会社もあれば、実質的に現場任せの会社もあります。
ここは制度の有無より、使っている人が実際にいるかどうかのほうが大事でしょう。制度はあっても稼働率を優先されて誰も使えていない、ということも起こりえます。
なお、スキルが伸びない原因が案件配属にあるのか、それとも別の要因なのかを切り分けたい場合は、SESでスキルが伸びない原因と次の選択肢で扱っています。
会社を変えても解決しにくいこと
一方で、転職しても持ち越しやすい不満もあります。ここを見誤ると、転職活動の労力に見合わない結果になりかねません。
客先常駐そのものへの疲れは、その代表です。自社ではない場所へ通い、自社以外のメンバーと働く時間が長い。この形自体が合わないなら、次の会社でも客先常駐が続く場合は、同じ不満が残る可能性があります。
現場が変わるたびのリセットも同じでしょう。慣れた頃に契約が終わり、また一から関係を作り直す。案件ごとに現場が変わる働き方が続くなら、次のSESでも同じ負担が残る可能性があります。
自社のサービスを育てたいという気持ちも、SESの立ち位置では満たしにくい部分です。外部企業の案件に参画する働き方では、プロダクトの方向を決める側に回りにくい場合があります。
このあたりが不満の中心にあるなら、比べる相手はSES企業同士ではありません。SESから社内SEへ転職したい人が確認すべきことやSESから自社開発へ転職したい人が確認すべきことのほうが、判断の材料になります。
次のSES会社を選ぶときに確認したいこと
ここからは、実際に会社を見るときの話です。
求人票に並ぶ制度名は、そのまま実態を表しているとは限りません。「案件選択制」と書かれていても、選べる範囲が広いのか、提示された数件から選ぶのかで中身は別物です。
制度の名前ではなく、運用のされ方を見ていきましょう。
案件情報がどこまで開示されるか
参画前に分かるのは、業務内容だけでしょうか。それとも、商流の位置や契約期間、現場の体制まで聞けるでしょうか。
情報が出てこない会社では、入ってからのギャップが生まれやすくなります。
希望と違う案件を断れるのか
ここは聞きにくい質問ですが、いちばん実態が出るところです。
断れる建前になっていても、断ると次の紹介が止まるのか、待機扱いになるのか。実際に断った人がいるのかどうかまで聞けると、運用が見えてきます。
待機になったときの扱い
案件と案件の間がどうなるかは、会社によって差があります。給与の扱い、待機中に何をするか、待機がどのくらい発生しているか。
このあたりは雇用契約書や就業規則で確認できる部分なので、入社前に見ておきましょう。
評価の基準と、給与への反映
何を見て評価されるのか。現場からの評価はどう拾われるのか。昇給のタイミングと幅はどうなっているか。
「頑張れば上がります」という説明だけで終わる場合は、もう一歩踏み込んで聞いておきたいところです。
キャリアの希望を誰と話すのか
営業なのか、技術側の責任者なのか、それとも面談の場自体がないのか。
希望を伝える相手が決まっていない会社では、数年たっても同じ種類の案件が続きやすくなります。
求人・面接で確認しておきたい質問
そのまま使える形にすると、次のようになります。全部を聞く必要はないので、自分の不満に近いものから選んでください。
- 案件はどのように決まりますか。提案された中から選べる形でしょうか
- 参画前に、商流の位置や契約期間まで教えてもらえますか
- 希望と違う案件をお断りした場合、その後はどうなりますか
- 直近で、案件変更の希望が通った例はありますか
- 待機が発生した場合、給与や過ごし方はどうなりますか
- 評価は誰が、どんな基準で判断していますか
- 現場での評価は、自社の評価にどう反映されますか
- キャリアの相談は、どなたと、どのくらいの頻度で行いますか
- 設計や要件定義に関わっている方は、実際にいらっしゃいますか
答えの中身もですが、答えられるかどうかもひとつの手がかりになります。運用が定まっている会社ほど、具体的な答えが返ってくるものです。
逆に、質問が歓迎されない雰囲気だった場合。それも、入社後の相談のしやすさを想像する材料になるでしょう。
SES以外へ移った方が合うケース
最後に、SESを続けない方が近道になりそうなケースも挙げておきます。
- 常駐という形そのものに疲れている
- 同じ場所で、同じメンバーと長く働きたい
- 自社のサービスや社内システムに、育てる側として関わりたい
- 会社が変わっても、案件次第で同じ状況になるのが不安
これらが中心なら、SES企業を比べる時間より、別の働き方を調べる時間のほうが実りがあります。社内SEならSESから社内SEへ、自社開発ならSESから自社開発へで、それぞれ評価されやすい経験と不足しやすい経験を扱っています。
どちらが上という話ではありません。いま感じている不満に、どちらが効くかという話です。
まとめ
SESからSESへの転職は、決して遠回りな選択ではありません。ただ、効く不満と効かない不満がはっきり分かれます。
- 案件の決まり方、評価、給与、営業との距離、商流、教育——このあたりは会社を変えると動く可能性がある
- 客先常駐そのもの、現場が変わる周期、自社サービスに関わりたい気持ち——このあたりは会社を変えても残りやすい
- 制度名ではなく、運用のされ方を聞く
- 「必ず改善する」会社も、「絶対に避けるべき」会社も、求人票だけでは分からない
まずは、いま頭に浮かんでいる不満をひとつ書き出してみてください。それが上の1行目に近いのか、2行目に近いのか。そこが決まれば、次に読むべき記事も、聞くべき質問も自然に絞れてきます。
※本記事は一般的な情報をもとにまとめたもので、個別の契約・待遇に関する助言ではありません。案件の決め方、評価制度、待機中の扱いなどは会社・契約によって異なります。実際の条件は、雇用契約書・就業規則や、応募先への確認でお願いします。最終更新日:2026-09-25